沢付きの土地の探し方——地図に載らない沢を、地番までたどる3つの方法
1. なぜ沢は地図に載らないのか
「沢のある土地が欲しい」と思って不動産サイトを検索しても、まず出てきません。理由は単純で、山の小さな沢は、地図にも公図にも載らないからです。国土地理院の地形図に描かれる河川は一定規模以上のもので、幅1〜2mの沢は等高線の凹みとして示唆されるだけ。法務局の公図にいたっては、そもそも地形を描く図面ではありません。
つまり「この土地に沢が流れているか」は、地図をいくら眺めても分からない。従来は、候補の地番を一つずつ登記で当たり、現地に足を運んで確かめるしかありませんでした。沢付きの土地が「たまたま知っている人」だけのものだったのは、このためです。
それでも、机上で当たりをつける方法は3つあります。順に見ていきます。
2. 方法① 地形図の等高線を読む
最も古典的な方法です。等高線が谷側(標高の低い方)へV字に切れ込んでいる場所が谷筋で、水が流れうる地形です。国土地理院の「地理院地図」で標高タイルや陰影起伏図を重ねると、谷の走り方が立体的に見えてきます。
ただし限界もはっきりしています。等高線の間隔(10m)より浅い谷は表現されず、水が実際に流れているかは分からない。谷地形イコール沢ではありません。雨のときだけ水が走る涸れ沢も、年中流れる沢も、等高線上は同じ谷です。
3. 方法② 公図の「青線」を探す
公図(登記所備付地図)には、地番のない細長い国公有地が描かれていることがあります。かつて青色で着色されたことから「青線(あおせん)」と呼ばれ、法定外公共物の水路を示します。地番欄が「水」となっている筆も同様です。
青線が敷地に接している、あるいは貫いている土地は、法的に水路と認められた流れがそこにあった(ある)ことを意味します。これは強い手がかりです。ただし逆は成り立ちません。青線がなくても沢は流れます。山林の小さな沢の多くは、青線として登記されないまま流れています。つまり公図で拾えるのは沢の一部だけです。
4. 方法③ DEM(数値標高モデル)で流路を割り出す
現在もっとも網羅的なのがこの方法です。県や林野庁が公開する高精細DEM(1m級の標高データ)を使うと、地形の窪みを水がどう流れ下るかを計算で追跡できます。GISの用語で「流路抽出(フローアキュムレーション)」と呼ばれる処理で、各地点に「上流からどれだけの面積の水が集まるか(集水面積)」を割り当て、一定以上の集水面積を持つ線を「沢の候補」として描き出します。
この方法の強みは、青線に登記されていない小さな沢まで面的に、漏れなく拾えること。集水面積という数値が付くので、「大きな沢」「細い沢」を定量的に区別できることです。私たちが山梨県北杜市(武川町・白州町)で運用している沢隣接地番検索システム sawa は、この解析を登記所備付地図の筆界と重ね、「どの地番に沢が通るか」を一覧化したものです。
5. 落とし穴——「沢が角をかすめるだけの筆」
地番と沢を重ねられるようになると、次の落とし穴が待っています。「沢が通る筆」の中身は一様ではないのです。
実例を挙げます。北杜市のある筆は、データ上「沢が通過」と判定されました。しかし詳しく見ると、通過長はわずか6.9m——敷地の角を沢がかすめているだけでした。沢のほとりで過ごす土地を探している人にとって、この筆は目的に合いません。逆に、隣の筆は沢が敷地の内部を79m流れていました。同じ「沢通過」でも、価値はまったく違います。
確認すべきは3点です。①沢が筆の内部を通るのか、境界沿いか、角だけか。②内部を通る長さは何mか。③その筆の使える平坦地はどれだけあるか(面積が広くても全面が急斜面なら、沢のほとりに小屋一つ建ちません)。この3点まで見て、はじめて「沢付きの土地」と呼べる候補になります。
6. 地番から所有者へ——登記のたどり方
候補の地番が決まったら、所有者を調べます。登記情報提供サービス(オンライン)で、全部事項は1筆330円、所有者事項なら140円。全部事項なら所有者の住所氏名に加え、抵当権や差押の有無まで確認できるので、購入打診まで考えるなら全部事項をおすすめします。
売りに出ていない山林を手に入れる唯一の道は、登記に記載された所有者へ直接手紙を送ることです。その具体的な手順と費用は、続編の「山林の所有者を調べて手紙を送る——登記330円から始める土地打診の全手順と費用」にまとめました。
sawa は北杜市(武川町・白州町)の約7万筆について、沢の通過・内部通過長・集水面積・平坦地面積・土砂災害警戒区域を評価済みです。エリアの地番データ提供や、条件を絞ったリストのご相談は こちら。